形成外科や美容外科とはちがう
看護師であれば理解されている人も多いかと思いますが、整形外科とはどのような診療科であるのか、今一度おさらいしておきましょう。特に混同されがちな「形成外科」と「美容外科」の2つとのちがいを押さえておくことで、理解が深まると思います。
整形外科の始まりと診療項目
整形外科が扱っている疾患の歴史は古く、紀元前の頃より治療が行われてきた記述が残っています。その後、専門領域として確立されたのが中世ヨーロッパの時代になります。脊柱変形や怪我によって手足や身体が不自由になってしまった子供達は、世間から不当な扱いを受けてしまうことが多々ありました。そこでパリ大学のニコラス医学教授が身体を治すことによって、不当な扱いから避けることができると考えた医学が整形外科の始まりです。日本では東京帝国大学に初めて整形外科学講座が作られています。
当時は限定的だった診療項目も現在の整形外科では、はるかに広い範囲が対象となっています。運動器を構成するすべての組織の疾病や外傷を扱うようになっているので、打撲や捻挫などに始まり、骨粗しょう症や加齢に伴う変形性骨関節疾患なども含まれています。リハビリテーション医学とも密接な関係があり、治した身体を動かせるようにトレーニングすることも扱います。つまり整形外科は、運動機能障害を治療する分野として確立されています。
形成外科との違い
整形外科と形成外科はよく似た響きということもあり、混同されがちな診療科目ですが、対象となる患者さんは両者で全く異なります。整形外科は身体を自分の意思で動かすための運動機能を治療する外科ですので、病気や怪我で不自由になってしまった身体を治療して「動かせるようにする」ことが目的です。一方で形成外科は、身体の見た目を治療する外科ですので、口唇口蓋裂で先天的に唇が裂けて生まれてきた人などの、身体を治療して「見た目を変える」ことが目的です。
美容外科との違い
美容外科は世間の人が使ういわゆる「整形」のジャンルを扱います。フェイスリフトで口角を上げたり、鼻を高くしたり、一重まぶたを二重まぶたにしたり、これらの健常な部分を治療します。整形外科も形成外科も、病気や怪我などによる身体を扱いますが、美容外科は健常な部分の見た目を変える目的でちがいがあります。整形外科、形成外科では疾患による異常の治療ですので、健康保険が適用されますが、美容外科では健常な部分を扱うので健康保険の適用外というちがいもあります。